Blog
田中啓二先生追悼行事
プロテアソームの発見以降、「タンパク質の分解」研究分野の世界的な牽引者であられた田中啓二先生が、昨年7月23日に75歳の若さでご逝去されました。2月1日 (日) 午前中に東京科学大学で追悼シンポジウム、午後から東京ガーデンパレスで偲ぶ会が開催されました。
シンポジウムでの7人の講演を拝聴し、改めて田中先生が成し遂げられたサイエンスの偉大さに感じ入りました。特に、多数の後進研究者を育成されたことに最大の敬意を表します。お酒が大好きな明るいキャラクターで、多くの人々を魅了された一生でした。大隅良典先生 (2016年ノーベル生理学医学賞受賞者) をはじめとして同世代の方々と「7人の侍」を結成され、各地で講演されたこともよく知られています。京産大の潮田さんが京都で小胞体ストレス研究会を主催した時に「最後の7人の侍講演会」を企画したのですが、コロナ禍で実現しなかったのはとても残念でした。
私の2回生向け細胞生物学の講義では、もちろん「タンパク質の分解」を取り上げましたし、田中先生と大隅先生のご業績を紹介しました。さらに、田中先生から直接伺った裏話を多数散りばめており、学生にとってとても面白い講義になっていると自負しています。昨年3月に大学院理学研究科を定年退職しましたので、今年度に通常講義は全く行っておりません。ですが、定年退職した名誉教授であっても学生のためになるなら講義して良いという制度が理学研究科にでき、その第1号として私が選ばれて、来年度の前期に細胞生物学の講義を2回担当します。何を担当したいですかと尋ねられ、シャペロンやタンパク質の品質管理ではなく、「タンパク質の分解」を担当したいと即答しました。今後も機会のあるかぎり田中先生のご業績と研究へのご姿勢を伝えていきたいと考えています。ご冥福を心よりお祈りいたします。