Blog

メダカ BBF2H7 解析結果を JCB に上梓

2017年06月10日

5月からめちゃくちゃに忙しかったので、報告が遅れましたが、「メダカ初期発生過程を使った生理的小胞体ストレスの解析結果」を話したらとても好評だった、とこれまでブログに何回か書いてきた研究成果が5月12日 (金) 日本時間22時に Journal of Cell Biology 電子版に掲載され、6月5日(月) 号に正式掲載されました。送った図は表紙には採用されなかったものの、その号の論文の中で1報のみの内容を紹介する In Focus というコーナーに "Choosing the right response to ER stress" の見出しで取り上げられました。石川助教と私の顔写真付きです。

5月11日 (木) の夕方からプレスリリースを行ったところ、5月13日 (土) の京都・産経・日経朝刊、15日 (月) の日刊工業、26日 (金) の読売で取り上げられました。

京大のホームページでも紹介されています。ご覧下さい。
●小胞体ストレスの原因タンパク質に応じて異なるストレスセンサーが活性化
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2017/170512_1.html

2013年5月3日のブログに記載したとおり、ATF6α と ATF6β のダブルノックアウトメダカでは、8型コラーゲン等の品質管理ができないために脊索細胞が整列して伸張することができず、死に至ることを石川助教が証明してくれました。ATF6 様の小胞体膜結合性転写因子があと5個脊椎動物には存在しています。BBF2H7 はその1つです。

BBF2H7-KO 13期生遠山君が BBF2H7-KO メダカを作出して解析し、尻尾が極端に短いことを発見しました。その異常がいつから始まるのか発生過程を遡って解析したところ、BBF2H7-KO メダカにはATF6α と ATF6β が存在しますから、脊索細胞が整列して伸張する過程には問題ありません。その後で起こる液胞化段階で脊索に歪みが生じることを見出しました (3年間解析、図1〜図4A)。14期生中村さんが引き継ぎ、BFBF2H7 と ATF6α もしくは ATF6β のダブルノックアウトメダカを作出するとその歪みがひどくなる、すなわち、液胞化には ATF6 と BBF2H7 の両方が必要なことを明らかにしました (1年間解析、図4B、4C)。液胞化の段階で、脊索細胞は大きな液胞化細胞と鞘細胞に分化します。液胞化細胞では液胞が大きくなって、水で充満したようになります。一方、鞘細胞が2型コラーゲンを合成し始めます。2型コラーゲンが細胞表面に分泌されると基底膜を形成し、鞘を作ります。つまり、自転車のタイヤのチューブに水を充満させ、外を硬い鞘で覆うと脊索がまっすぐ延びていくのです。15期生玉田君が引き継ぎ、 BBF2H7-KO メダカでは野生型メダカと同様に2型コラーゲンが合成されているものの、細胞表面に分泌されていないことを証明してくれました (1年間解析、図4D)。鞘ができないために、歪みが生じると考えられました。

8型コラーゲンと2型コラーゲンの違いは何でしょうか?それは長さの違いなのです。8型は短鎖コラーゲンなので、ATF6 の作用によってシャペロンが増量されれば高次構造を形成することができ、通常サイズの輸送小胞 (60-80 nm) に入って細胞表面まで輸送されます。ところが2型は長鎖コラーゲン (>300 nm) なので、ATF6 の作用によってシャペロンが増量されて高次構造を形成しても通常サイズの輸送小胞には入ることができないのです。長鎖コラーゲン (>300 nm) をどうやって輸送するのかは細胞生物学上の大きな謎でしたが、最近になって、長鎖コラーゲンを輸送するために輸送小胞が巨大化すると理解されるようになりました。

そこで石川助教が、BBF2H7 は輸送小胞の巨大化に関与する遺伝子を纏めて転写制御するとの仮説を立て、証明してくれました (2年間解析、図5〜図8)。計7年かかり、リバイズの要求も厳しくて4ヶ月半かかりましたが、生理的に発生する小胞体ストレスの原因タンパク質は局面によって異なり、その打開に向けて最適な小胞体ストレスセンサーが活性化されるという、私の長年の悲願を達成することができました。みんな、ご苦労様でした。

 

 


ブログの記事

ブログのカレンダー

2019年10月
S M T W T F S
29 30 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 1 2

アーカイブ