FASEB Summer Research Conference 2011
2011年6月12日から17日までSaxtons River , VT (USA)で開催された "From Unfolded Proteins in the Endoplasmic Reticulum to Disease" に参加した蜷川君より
去年に引き続き、今年もFASEBの学会に参加させて頂いたので報告させて頂きます。去年は、まぁ参加することが一番の興味だったのですが、今年は、興味の対象がかわってきていました。というのも、去年はデータの量がまだ不十分だったので自身の仕事にどういう反響がくるかな〜というのがあまり大きくなかったのですが、今回は、目新しいデータをもっての参加ということで、仕事の反響がどんなものかな〜という気持ちがありました。では、順を追って振り返ってみたいと思います。
単独で動いた去年とは違い、今年は森研として団体で移動していたので、移動はとても楽でした。関西国際空港→サンフランシスコ→ボストンという経路でボストンに到着です。1泊したのちに少し空き時間があり、午前中にボストン美術館に行きました。世界から集められた色々な展示物がありました。Chihulyという現代美術のものはユニークでなかなか面白かったです。生きているうちに高い評価されるような芸術家は幸せだな〜と感じてみたり。研究は芸術よりも流れが速いし、優秀な方も多いので、だいたいは生きているうちに評価されるとは思いますが・・・。どこか共通するものもあるのかな、という感じです。午後には学会会場に3時間かけてバスで移動しました。
学会会場のオープニングセレモニー?にいくと、とりあえず、アジア系の人が1人でいたので声をかけやすくて話しかけてみたら、河野研のタイ人のSophaくん (写真真中) でした。また、前回参加した時に顔見知り程度のカウフマン研のCaoくん (写真左) ともこの学会を通じて仲良くさせてもらいました。まだ私には、欧米系の方々とどうやって仲良くなるか?英語力も合わせて足りないな〜という感じです。彼らに別に冷たくされた訳ではないですが・・・。
学会が始まり2日目の最初の講演は、ERADのメインのDanさんの講演でした。Danさんが最初にEDEMがmannosidaseかlectinか決まっていないというイントロをされたのですが、あれっ、そこって不確定なんや!?自分の調べ方が全く足らないな。論文に付加せねば!と思ったら、彼らは新しいEDEMの機能のモデルを提唱しようとしていたようで、EDEMと基質がCysを介して結合するのではないか?ということでした。よく考えるとそれは、はっきりとEDEMがmannosidase活性を持つことを示した自身のデータが世界に対してもつ意味をより深めてくれるというプラスの面をもちあわせていました。Danさんの講演後には、森先生もどういう質問が来るか、どういう反響がくるか楽しみだとのことでした。
面白い話だな〜と思ったのは、多くあったのですが、学会で特に印象に残ったのは、量にものを言わせた以下の①と②の網羅的解析をもちいたChristiansonさんを筆頭とする研究でした。①15個くらいのすでにわかっているERAD(小胞体関連分解)因子群のそれぞれにtagをつけ、それぞれ発現させて精製し、mass spectrometryで結合タンパク質を同定してinteraction mapを書いて、②さらに同定された20個くらいの因子をそれぞれKnock downしたときに6つの基質に対する影響はどうなるかを解析しHeat mapを書いていました。これが目新しい!という驚きのような発見はなかったようにも今思うと思えますが、やはり、量にものを言わせたアメリカ的な発想と解析方法に含まれる情報量は莫大で、多くの人が集まり興味を示していました。
また分泌経路にかかわる因子群を同定するため、また遺伝子の機能を解析するためricinというtoxinを用いて解析した講演も興味深いものでした。詳細は省きますが、これもまた30個のshRNAを20,000個の遺伝子に対してそれぞれ作り60万個のshRNAを土台とした解析でした。こういう力技の解析はアメリカの研究費をもってして成り立つものだと思いましたし、感心するばかりでした。
学会4日目の水曜日の午後には森先生の講演があり、自分がやった仕事の話をされました。どういう風に話されるか勉強しつつ、またそれに対してどのような質問が来るのかなと思いつつ聞いていました。質問はわりと想定内の質問だったと思いましたが、周りのインパクト的には、まだpublicationまでにはやることがたくさんある仕事と思われた印象だったようです。ただ、講演後には、森先生が自身の顔写真をだしてくれたこともありケンブリッジ大学の院生に「アナタの仕事?」とか言って話しかけられたのは、かなり嬉しかったです。ただ白人女性の英語はいっそう速く、会話は四苦八苦でしたが。
学会5日目には自身のポスター発表がありましたが、発表時間の16時になってもまだまだ人は来ず、森先生が前日話してくれたからもうあんまり見に来る人いないかなと少し寂しく思っていました。16時30分前くらいからポツポツ人が来てくれはじめました。よく考えると毎日16時30分前くらいからディスカッションが連日始まっていた感じでしたが、自分のポスターになると一層不安になった感じです。発表はめちゃくちゃな英語でも、この仕事の意義と面白いところを伝えるということはできたのではないかな、という印象です。途中にはDanさんやChristiansonさんも来てくれて色々言ってもらいました。もうちょっと簡単な実験で詰められるところもあって、サジェスチョンをうけ、さすがだなと思いました。ただやはり大物相手だと、緊張しました。190cmくらいある方々に囲まれると威圧感も半端なくありました。講演で話したところももう一度聞かれたりして、ポスターの意味もしっかりあったように思えます。その後も何人か来てくれてディスカッションしてもらいました。中にはイントロダクションからしっかり説明して喉カラカラになりながら話し終えるとThank youとだけ言って去っていく方もいました。こっちの英語を含めた問題かもしれませんが、Upsetしました。まぁ人それぞれですね。
こうして学会も無事終わり、帰路もボストン→サンフランシスコ→関西空港という経路です。サンフランシスコで一泊した際には、晩ご飯にReasonableといったのに高いお店を紹介され、学生にはきつい値段だったので、森先生に数品おごっていただきました。ありがとうございます。ウエイターの方も紳士すぎてかなり魅力的で、なかなか出来る体験ではなかったです。しかし、すんなりいかないのが海外という訳で、サンフランシスコで、空港には2時間前には着いていたのですが、check inに1時間ほど待たされ、さらに前日にUnited航空にシステムトラブルがあったようで3人の中で私だけCheck inできず、さらに30分ほどかかりました。向こうの人にはアンタのCheck inが遅いからだよ、みたいなこと言われましたが、まぁ向こうの過失だと思ったし、ギリギリ飛行機には乗れました。なんとかねじ込んだ感じです。楽しみにし、朝食を控えていた空港のハンバーガーを食べられなかったのは結構残念でした。
全体の感想としては、FASEB参加が2年連続2回目ということもあって、顔見知りがたくさんできたな〜と思います。今回のOrganizerのManuさんにも顔と名前だけは覚えてもらっていました。バナナとか、ブドウとかところ構わず食べているのはちょっと文化の差を感じて面白いですが、このManuさんは本当に切れ者だと思います。ただデータを持っていっても3大誌ばかりに投稿しているManuさんに仕事のインパクトを残せたとは全く思いません。足りないです。やはり毎年この学会で発表するくらいの研究をしたいと思い、口頭発表もそのうちには!とモチベーションがさらに上がる感じでした。去年はinvited speakerでなかった方がinvited speakerになっていたりして、よい仕事をすれば認めてもらえるのだと実感しています。しかし仕事にはやはり厳しく、世界のブレーンに認めてもらうには、hard workをし続けなければならないと思いました。しかし本当に厳しい彼らに認めてもらえるような日が来るんでしょうか・・・。それは友達になったCao君がよく言っていたup to youだと思うんで日々地道にやっていこうと決意をあらたにしました。最後に2年連続行かせて頂いた感謝を胸に、文章を結びたいと思います。ありがとうございました。
同じく "From Unfolded Proteins in the Endoplasmic Reticulum to Disease" に参加した小篠さんより
6月も半ばの梅雨の頃、FASEB Summer research conferenceに参加する機会を頂きました。アメリカはボストン、携帯も通じない山の中にある全寮制の高校が会場です。昨年と同じ場所らしいのですが、今年が海外学会初参加の私にはどんな所なのか知る由もありません。緊張と不安で時差ぼけなどもはや意識の外です。
セッションはやはり万国共通、学会特有の熱気に満ちた雰囲気です。From unfolded proteins in the endoplasmic reticulum to diseaseというのが今回のFASEBのテーマということで、医学系の研究者の方が多いように見受けられました。その熱気はポスター発表の時間にはさらに高まります。特に人気のあるポスターの前ではかなりのひとだかりができ、熱心な議論が交わされています。時には怒鳴り合ってるのかと思うほど語調が激しかったりもします。30分以上も一つのfigureについて議論が続いたりして驚かされたりもしました。そういえば森研=メダカの図式が根付いてきたようです。日本の京大、森ラボの人間だと言うと、メダカを使ってるのかとよく尋ねられました。
のどかな時間もありました。セッション自体は大体9時開始なのですが、前述したように会場は自然豊かな山の中。朝は小鳥の声に叩き起こされるので、そうそうゆっくりと眠ってはいられません。同室のひとを起こさないように部屋から滑りでてふらふらと散歩していると、本当に外国なんだと実感されてきます。京都よりも気温も湿度も遥かに低い空気、クローバー混じりの芝生が広がる広い構内に、シルバニアファミリーを思わせるような建物が幾つも点在しています。高校生の寮ということですが、言われなければ絶対にそうだとはおもわなかったでしょう。
ポスター発表に際しては、割当日程の前日にDavid Ron博士が森先生の案内で聞きに来てくださいました。緊張と混乱で操り人形のようになっていた私の説明はおそらく非常にくだくだしいものになっていたと思われますが、我慢強く最後まで聞いて頂けたのが嬉しかったです。ともあれRon博士を皮切りにたくさんの方が見に来てくださり、多分に好意的なコメントを頂けたのは本当に幸いでした。
ただ本当に自分の英語力の欠如が残念でした。セッションはスライドにかなりの部分助けられますが、ポスターはそうはいきません。重要なのは英語力よりも研究力…であることは確かなんでしょうが、やはりあくまでも最低限の英語力は必要です。Speakingが少々拙くても相手は大抵理解しようと頑張ってくれます。しかしListeningができないともうどうしようもありません。内容の判らない質問に答えることはできないのです。付け加えるなら、声の大きさが意外な盲点でした。もともと透過率の良い声の持ち主ではないのですが、会場の喧噪の中だといっそうです。ポスターの説明を3回も通すと、もはやまともな声が出なくなってしまいます。空気が乾燥しているせいもあるのでしょうが。とにかくそんなことにも他の人々とのエネルギーの差異を感じてしまいました。
最後になりましたが、今回のような貴重な機会を与えて頂きまして森先生には感謝いたします。自分自身やいろんなことを改めて見つめ直す良い経験になりました。本当に心からありがとうございました。