FASEB Research Conference (Amyloids and other abnormal protein folding process)

2002年06月15日

2002年6月15日−20日までColorado州Snowmassで開催された FASEB Research Conference (Amyloids and other abnormal protein folding process)に参加した吉田研究員より・・・

これまで国際学会はいつも森先生と一緒に参加しているのだが、今回は単独参加でしかも口頭発表、参加費も自分の研究費から捻出することになった。本来なら森先生が発表するところだが、若手研究者に機会を与えて厳しく鍛えようという森先生流の指導方法に感謝しつつ、学会に臨んだ。行きの飛行機の中で、森研究室の良きライバルであるDr. David Ronと一緒になった。"Hideはどんな話をするのか?"Davidも口頭発表するので、こっちの話の内容を聞きたいようだ。森研やRon研の現状をお互いに話しながら、学会会場に向かう。学会は会場だけで行われるのではない。既に飛行機の中から始まっているのだ。国際学会は大抵Receptionを兼ねたpartyから始まる。私もDavidと食事をしながら、研究のことや趣味のこと、家族のことなどとりとめもなく話す。いつもなら、森先生を盾にしてちょこちょこっと話すだけなのだが、今回は100%会話を楽しむことができた(私の英語を一生懸命聞いてくれる彼のおかげなのだが)。

講演はいくつかのSessionに分けられ、朝9時から夜の11時過ぎまで行われる。演者が厳選されているため、話の内容が濃い。これまで誰もできなかったことや考え も付かなかったことが次々と報告されていく。講演の後には、白熱した質疑応答が行 われる。

鋭い質問に対して単に回答するだけでなく、より広く高い観点に立って演者 が返答することによって議論がより深められる。個々の講演もすばらしいが、よく考 えられたSession構成により、それぞれの講演の内容が統合されsession終了後には新 たな概念が形成される。そして、conference全体を通して概観することによってより 高い理解が導かれ、それがまた新たなproposalにつながっていく。今回の学会は規模 が適切であるためか、そういう印象を強く持った。このような場で発表するのは最初 はかなりプレッシャーを感じたが、座長も聴衆もみなfriendlyで、私が緊張している と悟ると"Deep breath!"といって緊張を和らげてくれたり、わかりやすい英語で良い 質問をしてくれたりと、楽しみながら発表を終えることができた(どこまでこの学会 に貢献できたかについては自信がないが)。

宿舎も食事も全員一緒なので、そこでもDiscussionが続けられる。一人で食べてい ても彼らは笑顔でやってくる。若い研究者だけでなく、現在活躍中の有名な先生方、 また今は退官した歴史的な人物達までやってくる。研究の話だけではない。 Excursionに行けば皆子供のようにはしゃいでいる。今回はColorado峡谷をraftingで 何時間もかけて下ったが、学会のchairmanであるDr. Ron Kopitoが先頭に立って水鉄 砲で水を掛け合って大騒ぎをしたり、露天の温泉に浸かって悠々とくつろいでいた。 彼らは本当に科学者として人生を楽しんでいるのである。

森先生はよく"世界を目指せ"といわれる。なぜ世界を目指すべきなのか、なぜ 日本の中に閉じこもっていてはいけないのか、私も最初はよくわからなかったが、今 は本当にそう思う。日本しか知らないと、日本のことを絶対的価値観で計ってしま う。世界を知れば日本のことを相対的に計ることができる。例えば学歴偏差値が東大 が一番で京大が二番などということも世界的に見れば全く無意味である。学歴として はHarvardやStanfordなどでなければ価値がないし、そもそもおもしろい科学をする ために学歴は不必要である。Einsteinもいわゆる有名大学卒ではない。日本とUSAの 違いも、そのうち兵庫県と大阪府くらいの違いしかなくなるだろう。兵庫県で一番の 科学者であってもしょうがないではないか。  世界と衝突できる舞台は3つある。国際学会参加、論文発表、そして海外留学。ど れも最初は大変だが、経験を積むことでそれは楽しみに変わっていく。楽しみながら 科学に携わり、自分自身も大きく成長していく。そういう人生はいかがですか?