FASEB Summer Research Conference 2010

2010年08月12日

  2010年7月25日から30日までSaxtons River , VT (USA)で開催された"Protein Folding in the Cell"に参加した蜷川君より   

 私にとってアメリカは何度か行ったことのある国ですが、研究関係で行くのは初めてでした。そして1人で出張、旅行するのもこれがほぼ初めてだったように思います。なぜ(学会期間以外)1人で出張になったかと言いますと、私はテーマの関係で医学研究科武田研究室から援助して頂き、FASEB meetingに参加後、NIHを訪問するという機会をもらっていましたので他の方々より長い期間行くことになっていたからです。

 まずは最初のボストンから。ボストンというよりはアメリカに足を踏み入れると様々な人種の人たちがいることいること。1人だという緊張もあってか、必要以上に警戒していたことを記憶しています。ボストンにたどり着くまでにトラブル発生していまして、飛行機に1本乗り遅れた上にボストンまで荷物が届いていませんでした。荷物を届けてもらうために、住所を書いて係の人に渡すとパッとみて、OKみたいな感じで返してきて、「おーい、住所間違えてもらったら届かんぞ」と思いつつもう一回丁寧に書いて渡したら一瞥したのち、荷物の番号札を、渡した紙に貼って返してきました。「俺よりテキトーやな〜」と思いつつそれ以上何も言えず、これがアウェーの洗礼か。と思ってホテルで待つことに。まぁ翌朝には無事届いたんでよかったのですが。これだけではなく、この出張を通して日本人の丁寧さ丁重さは、彼らにはないということはよくわかりました。

ジョン・ハーバード像と  ボストンではかの有名なハーバード大学観光をし、それからFASEB会場へバスで移動し、学会は始まりました。学会は昼食後からポスター発表の4時まで毎日フリータイムというスケジュールでした。口頭発表の時間も守る人はそれほどおらず、オーバーして当然の流れ。オーバーしているのにも関わらずしっかりと質疑応答の時間をとっていたり、こういうところはゆるいな〜ととても感じました。ただ彼らの良いところは、そのアクティブさ。初対面の人でも臆せず、会ったらがっちり握手をし、どんな研究をしているんだ?どこのラボで今はどういう状況だ?みたいにコミュニケーションをしっかりとって情報交換の場として学会をうまく活用していました。また情報交換の場だけではなく、私はこれだけ良い研究をしているぞ!こういう人間だぞ!というアピールと人間関係構築の場でもあることを彼らはよく熟知していることを感じました。朝食の時間にある若手PIと同席していたところ、森先生の戦友である大物Peter Walterが偶然同席してきたとたん、そのPIはこれぞチャンスとばかりに、コミュニケーションを図っていた姿が印象的でした。席も少し離れていてPeterはそれほど相手にするようすもありませんでしたが。またか…と言った感じなんでしょうか。

 もう1つ気がついた点は意識の違いです。聞きに行ったポスターでネイティブの方に、英語が明らかにできないアジア人(私)に、一生懸命丁寧に説明してもらったのですがあまりの英語のスピードについていけず、説明後に何も気の利いたことが言えないことがありました(何度も聞き直すのが申し訳なくてわかったようなフリをするのも駄目なところかもしれませんが)。あまりに情けなく申し訳ないのでAbstract、dataを少し離れたところから眺めていたところ、ポスター発表時間は終わり夕食の時間になっていたのにも関わらず、Questionはあるのか?という風にきっちり対応してもらい、また少し話し込んでもらいました。そして最後に、英語ができなくてI’m sorry、と言うと、なんで?これは私の仕事よ。という答えが返ってきました。自分なりにそれを解釈すると、彼らは自分の仕事に興味をもってもらっていることに対して感謝することを知っているし、アピールの場を最大限生かしていたのだと思います。

 英語に関して言うと、英語が出来なくともわりと相手をしてくれます。研究者達なので英語よりも研究を見ています。一番大きなのは英語が出来ないという自信のなさからくる消極性をなくすことだと思いました。もちろん自分の研究の面白さを伝える英語と説明能力、相手の研究を理解するための聞き取り能力もあればこしたことはありませんが。英語ができないことに対して彼らの心は想像以上に開かれています。

 学会終了後はボストンからニューヨークに移動して観光後、ニューヨークからワシントンに飛びNIHを訪問させてもらいました。NIHの施設は一通り設備がそろっていました。ラボ独自に使う器具等も色々みせて頂いたりしましたが、ここで感じたことは、むしろ森研の研究環境の良さです。森研には世界とわたりあえるだけの設備が十分すぎるほどあると実感しました。ラボを訪問させてもらった時に発表する機会を頂いていたのですが、感じたのは英語の問題よりも、研究の伝え方、つまりプレゼンの話の組み立ての拙さでした。先にも書きましたが、彼らはひどい英語を聞いてはくれます。そしてそれに対して研究がおもしろいかどうかということを常に見ていました。

 8月5日には現在、勢いのあるラボのDr. Manuのラボを見学させてもらいました。プログレスにも参加させてもらったのですが、Dr. Manuは頭の回転スピードが違うな。と思いました。アイデアも色々豊富でしたし、それを私に披露する「余裕」も感じました。私みたいなペーペーからも情報を色々取り入れる姿勢を感じましたし、貪欲さに溢れています。彼らと競争などはかなり大変(望まない)ですし、研究を続けて行くにはオリジナリティをどこに持って行くのかが重要だと思いました。確かDr. Manuはインド系の方だったとおもいますが、この出張を通してインド、中国は人口が多いだけに振れ幅はあるでしょうが、すばらしい方はたくさんいて、やはり今後伸びていくのではないかと感じます。まぁ裕福なアメリカに定住し、アメリカの力になる方々も多いとは思いましたが。

 サッカー好きとして書かせてもらうと、2010W杯でサッカー日本代表は技術の高さ、運動量、勤勉さ、組織プレーなどを生かして世界と渡り合っていたと思います。研究も、そういう日本人の特性を生かし、やるべきではないかと考えます。具体的には、丁寧さ、正確さ、勤勉さ、運動量などを生かして、彼らの武器とする情報量や財力、圧倒的力に対抗すべきなのかな。と思いました。おのずと特性はでてきているでしょうが。

 生活の話も少し。向こうの人たちは主張が強いです。雑草のような生活力があります。こちらで言えば大阪のおばちゃんみたいな感じでしょうか。それをさらにパワーアップさせた感じです(大阪のように、横断歩道でも青は進め、赤は気をつけて進め の基本は変わりませんが、割合がかなり多いです:ずうずうしさ、ふてぶてしさの現れ!?)。それは生きるということと常に対面しているからではないでしょうか。ただそんな中でも彼らは生活を楽しむということを知っていて切羽詰まった感を出しておらず、オンオフがはっきりしているというように感じました。生き延びるということが、いつも当たり前に念頭にあるからだと思います。誤解があるかもしれませんが。

 最後に外に出てみると余計Kazu Moriの偉大さを感じましたし、私自身が、色々な意味で守られている環境にあると感じました。研究の世界でやっていくにはまだまだ学ばなければならないことが多くあると感じ、研鑽を積まなければならないとさらに気持ちを引き締めるばかりでした。今回の出張に際して機会を与えて下さった森先生、武田先生に感謝の意を表して結びの言葉としたいと思います。ありがとうございます。

 

        同じく"Protein Folding in the Cell"に参加した石川君より         

 7月の終わりにFASEB Summer Research Conferenceに参加しました。会場はアメリカのサクストンリバーで昨年に続いて2回目の海外学会です。成田からボストンに行き,一泊したのちシャトルバスでサクストンリバーへ行きました。ボストンもサクストンリバーも緯度が高いせいか気温が低く,真夏とは思えないような過ごしやすい気候でした。現地での宿泊施設は高校の寮として使用されているバーモントアカデミーというところです。敷地がとても広いので,それぞれの建物が敷地内に点々としていて非常にゆったりとしています。野生のリスがいましたし,芝生が美しくてのんびりとした雰囲気の会場でした。

 学会のスケジュールは基本的に午前中にセッション,お昼は自由時間,夕方からポスターがあって,夕食後10時くらいまでセッションがありました。今回のFASEBのテーマはProtein Folding in the Cellということで,UPRやERAD以外にもFolding系の研究者がたくさん来ていました。日本からは京都産業大学の伊藤維昭先生と元島史尋先生が参加されていました。

 ここ数年,森研究室ではマウスに代わるモデル生物としてメダカを用いています。日本人にはおなじみのメダカなのですが,海外の人はほとんどメダカを知りません。モデル生物(魚)といえば、ゼブラフィッシュなのです。昨年参加したFASEBでは一生懸命メダカについて説明をしたあと,ポスターの中ほどで"Wait...?What is Medaka?"と言われて脱力したこともありました。昨年度の反省を生かし,今回の学会ではメダカを海外の人に知ってもらうことを第一の目標にしました。メダカの長所の一つとして,遺伝子破壊や遺伝子導入が比較的容易に行えるという点があるのですが,特にこれらの点をアピールするため,ポスターに遺伝子破壊メダカの模式図や,遺伝子組換えによる光るメダカの写真をいれました。自分としては納得のいくポスターになりましたので今年こそはと意気込んで学会に臨みました。

 いざポスター発表を始めると,やはり光るメダカの写真がよかったのか,多くの人が足を止めてポスターをみてくれました。なにより嬉しかったのが, David Ron博士とRichard Morimoto博士,Carol Gross博士がポスターを見に来てくださったことです。すごく緊張しました。良い研究ですねといっていただけたのが嬉しかったです。今年はメダカをきちんと紹介できたのではないかと思いました。

 一週間の学会を終えて痛切に感じたことは、やはり英語力が重要であるということです。研究の話ですと,少しは理解して会話できたのですが,日常英会話が全くのお手上げで,次回海外に行くことに備えてしっかりと勉強しようと思いました。また,学会を通じて向こうの人達の元気の良さに圧倒されました。もっと体力をつけたいと思います。あと,宿泊施設にシャンプーがなくて困りましたので次回は忘れないようにしようと思いました。最後になりましたが,このような貴重な機会を与えていただきました森先生にお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
 

        同じく"Protein Folding in the Cell"に参加した佐藤さんより 

 7月終わり、うだるような暑さが続く日本を離れ、FASEB Summer Research Conference -Protein Folding in the Cell-に参加するためアメリカSaxtons Riverにやってきました。私にとって海外学会はおろか国外へ行くのも初めてだったので、日本とアメリカの違いを見つけては驚くという1週間となりました。

 最初に海外の学会は日本の学会とは違うなぁと感じたのは、話の途中に笑うポイントを盛り込んでいらっしゃる方が多く、発表中に笑いが起こるという光景が良く見られたことです。ある日の午前中最後の演者は第一声『お昼前で最後まで聞いてもらえるかわからないから、最初に結論を話します。』と、聴衆を引きつけてから結論→イントロダクション→結果という構成で話されており、こういった発表の仕方も有るのだと勉強になりました。ただタイムスケジュールは全体的に遅れる傾向にあり、発表時間5分オーバーは当たり前。だからといって質疑応答時間は削らないのはアメリカ流なのかもしれません。そのため時間を気にせず活発な議論が繰り広げられていました。

 また、アメリカはスケールが大きいと聞く事がありますが、学会中にこれを実感させられた事が有りました。全日程が終了し、帰りのバスに乗り込もうとしていたところ遠くでヘリコプターの音が。なんでヘリコプターの音が聞こえるのかなぁ思っていたら、どうやらある研究室はヘリコプターで帰るらしいとのこと。ヘリコプターを止める事ができる学会会場の広さもそうですが、日本ではヘリコプターは普通、帰宅手段として使う乗り物ではないですよね。そんな乗り物を帰宅手段として使うアメリカは大きいなぁと感じさせられた出来事でした。(学会会場は全寮制の高校との事でしたが、アメフト用グラウンド、野球場、体育館、スケートリンク、スキーのジャンプ台と高校とは思えない程、施設が充実していました。)

 そして当たり前と言えば当たり前ですが一番違うのは言葉で、学会参加にあたって一番の不安事項でもありました。しかし、実際に参加してみるとネイティブの方はつたない英語でも真摯に聞いてくれます。話せないからと逃げ腰になってしまうのではなく、まずは間違っても良いから話そうとする姿勢が大切なんだと思いました。それと同時に、細かく話したいと思った時にきちんと伝え切れずもどかしい思いもたくさんしたので、次回海外に行く時に備えてもっと英語を勉強しようと思います。最後になりましたが、今回このような貴重な機会を与えて下さりました森先生に心から感謝申し上げます。