FASEB Summer Research Conference 2015
2015年6月14日から19日まで Saxtons River , VT (USA) で開催された "From Unfolded Proteins in the Endoplasmic Reticulum to Disease" に参加した山口君より
梅雨入り直後の2015年6月中旬、FASEB Summer Research Conferenceに参加させて頂きましたので、その感想を書かせていただきます。私にとって人生初の海外旅行(しかも学会発表!)ということで、前日まで準備している間もかなり浮足立った状態で過ごしていました。加えて今回はポスター発表のみだと考えていたのですが、2分間程度のフラッシュトークが必要であると後になって分かり、その準備にも色々と試行錯誤することになりました。先生方には出発の前日まで発表を改善するお手伝いをして頂けましたことを、この場を借りて重ねてお礼申し上げます。
こうして、前日まで発表の準備に追われるという慌ただしい状態ながらも出発当日を迎えました。初日は飛行機での移動のみで、伊丹→成田→トロント→ボストンという経路でした。成田→トロント間が13時間という長時間のフライトということで携帯用の枕などを準備してはいたのですが、慣れない飛行機の旅のせいか結局あまり眠ることができませんでした。そこで暇つぶしに映画を見ようと思ったところ、当然といえば当然なのですが、カナダの航空会社だけあって映画の字幕は英語かフランス語しか存在しませんでした。ただ、これは逆に英語の聞き取りとしては中々いい練習になったかと思います。また、まだ日本で封切られていない映画をタダで見ることができたことはラッキーでした。ここまでは若干の飛行機の遅れはありながらも順調だったのですが、最大のアクシデントがトロントの空港で起こりました。なんと荷物の輸送システムがダウンして本来なら引き上げずにすむはずの荷物を一度受け取ってまた預けなければならない事態になったのです。しかも、成田からの出発が遅れたせいもあって次の便までの時間が殆ど無かったため大いに焦りました。このとき同行されていた石川先生がいなければ僕はここで事態を把握できないまま野垂れ死んでいたと思います。その後なんとか荷物を預け直し、税関の職員さんに落ち着けと言われながら指紋を撮られ、ダッシュで搭乗口に到着して時間ギリギリに間に合うことが出来ました。結局システム自体の問題であったためか出発が遅れていたので、走る必要はなかったというオチはつきましたが。そんなこんなで慌ただしくもなんとかボストンに到着し、空港近くのホテルに宿泊して一日目を終えました。
二日目は午後にバスで会場に移動するまで時間の猶予があったので森先生、石川先生と共にボストン美術館へ行きました。美術館に向かう途中に地下鉄の駅が一つ封鎖されてルートが変わっているというアクシデントもありましたが、なんとか到着したボストン美術館では特設展示として葛飾北斎展が開かれておりました。海外でも単独の特集が組まれるほど有名だとは思わなかったのですが、芸術に国境は無いという言葉のとおり思った以上に多くの人が興味深く鑑賞されていたようです。美術館で昼食をとった後、空港まで戻ってからバスで会場であるバーモント州にあるサクストンリバーに向かいました。バスの中では発表のための原稿を録音したものをひたすら聞きながら練習するという地味な作業をして過ごしていましたが、外の景色を眺めている内に日本とは趣の異なるビルとハイウェイの景色についつい目を奪われてしまいました。到着してすぐにあったのは軽食とお酒(!?)の出る簡単なレセプションパーティーです。学会でいきなりお酒が出てくることも衝撃的でしたが、思った以上に皆さんぐいぐい飲んだ上で夜のセッションに出ていたことにも驚きました。眠くならないのでしょうか。
学会本番は主に主要なセッションが午前と夜に割り振られ、その間に2時間半程度の長い自由時間とポスターセッションがあるという構成です。昼食を食べた後の眠くなりやすい時間帯が休息にあてられているのは僕としては非常に嬉しい点でした。三日目には僕にとってのメインイベントであるポスター発表とフラッシュトークがありました。かなり浮足立った調子で当日を迎えましたが、いざセッションが始まると座長の方から時間厳守でオーバーしたら強制終了するよ!と告知があり、準備段階で発表時間がピッタリ2分だったためにいきなり動揺するはめとなりました。ミスができないと力んでしまうとなかなか上手く口が回らず、結局残り僅かながらあえなくタイムオーバーとなってしまいました。この時なぜかグミをもらったのですが、何かのジョークなのかはわかりませんでした(何か言っていたとは思いますが、残念ながら聞き取れず)。この時に限らずジョーク系の話は聞いてから理解するまでラグがあるので皆と同じタイミングで笑えないという微妙な敗北感を味わったことが悔しかったです。ポスター発表は三日目と五日目の2回ありました。自分の研究に興味を持ってくれる人がいるか不安だったのですが、予想していた以上に多くの方が説明を聞きに来てくださいました。特に質問を受けたのは扱っているモデル生物に関してで、やはりUPR研究でカタユウレイボヤやカワヤツメを扱っている人間は珍しいのだと思います。特にAbagail Rosenさんには研究の意義や目的のところまで議論をさせて頂き、とてもいい経験になりました。
五日目の夜には最終日の前日のパーティーがあり、みんなでお酒を飲みながらわいわいと雑談に興じる時間がありました。この時、DJのような人が鳴らす音楽に合わせて踊っている中に石川先生と共に放り込まれた時は恥ずかしくもありましたが、森先生も踊っている中をなんとか形だけでも取り繕って踊りました。ですがやはりダンスは苦手でしたので隙を見てそそくさと元のテーブルに戻ってしまいました。最終日には昼食にステーキとロブスターというすごい組み合わせが出てきました。残念なことに僕はその日そこまで食欲が無かったため食べられなかったのですが、みなさん丸々一匹のロブスターを頑張って解体して食べていたことが記憶に残っています。
学会が終わった後は再びバスで空港まで戻り、ボストン市内を散策しました。この日の目玉はボストン市街をめぐる水陸両用車でした。のんびりと周りの景色を眺めているのは長閑で良いものでした。途中で立ち寄ったオイスターバーでは先生方が生牡蠣を注文されている中、僕はケチってクラムチャウダーを注文して食べていたのですが、これが以外に具沢山でおいしく中々当たりの品でした。その後立ち寄った大きなフリーマーケットでお土産を購入したりしてのんびりと過ごしてから、その夜はホテルで森先生石川先生と共に簡単な打ち上げをしました。そして翌日再びボストン→トロント→成田→伊丹の経路を経て無事日本にたどり着くことができました。
学会全体を通じて、セッションでの話やポスター発表に関する議論を通じて様々な興味深い話を聞くことができました。ただ、四日目の途中で体調を崩してしっかりと聞くことができなかったセッションがあったことは残念でした。心配していた英語でのディスカッションでは、僕が日本人の学生であるためか皆さん辛抱強く話を聞いて、わかりやすく説明してくださったため思ったよりは話を理解して議論することができました。ただ、それでも難しい質問に関しては森先生から助け舟を出していただかないと対応することができなかったことは心残りです。また、自身の研究を魅力的に伝えるプレゼンテーションということに関してはまだまだ改善の余地が多分にありましたので、この点についてはさらなる積極的な努力が必要な点だと思います。
この旅の間で強く感じたことは、世間には自分が思っている上に親切な人が多いということです。落とした飛行機のチケットを拾ってくれた人、バスの行き先について教えてくれた運転手の人、地下鉄の駅が閉まっていることを教えてくれた人、他にもいろいろな人が僕を助けてくれました。だからこそ、自分がわからない未知の場所であっても、勇気を出して飛び込んでみると意外となんとかなるものだと感じられたことが僕にとって非常に大きな経験になったと思います。この度はこのような経験を得る機会をくださったことを改めて感謝したいと思います。