研究内容

森教授 2018 文化功労者に選出

ある秋の日、文科省の方から電話があり「文化功労者に内定しましたが、お受けになりますか?」と尋ねられましたので、「光栄です。ありがとうございます」と返答しました。2010年の紫綬褒章、2016年の恩賜賞・学士院賞に続く国からのご褒美ですが、60歳でいただいてよいのかなというのが、正直なところです。今年度の受賞者20人の中で最年少、学術の分野では恐らく山中先生の48歳に次ぐ若さだと思います。ただし、閣議了承が必要な案件ですので、正式決定になるまで内密にしてください、とのことでした。

しばらくして、正式決定となり、10月31日(水)の午前中に記者会見を行いました。冒頭に「私が携わってきた小胞体ストレス応答という学問分野が文化として認められたことをとてもうれしく思います。」と述べ、「30年前に米国に飛び出したことによって小胞体ストレス応答という未知なる山の麓にたどり着くことができました。それからは、ひたすらこの山を登り続けて来ました。」と続けました。Mary-Jane Gething、Joe Sambrook、由良隆先生の導きと、途中からこの山登りに加わってくれた共同研究者達のおかげで、良い登り方をしているとお褒めいただき、さらに頂上を目指すようにと背中を押していただいたのだと思います。研究室のスタッフや学生達と一緒に今後も登り続けます。

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11月5日 (月) に授賞式があり (皆さんが想像する11月3日は文化勲章授賞式です)、東京のホテルオークラで文科省副大臣から賞状をいただきました。参議院の予算委員会を抜けてこられた文科省大臣も出席されての昼食会のあと、午後遅くから文化勲章受章者とご一緒に宮中でのお茶会に招かれました。

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年齢順でテーブルが分かれ、一番若い組は商法の江頭憲治郎先生、作曲家の都倉俊一さん、和食の村田吉弘さんと私の4人でした。お役人の方々が続いたあと、秋篠宮ご夫妻、皇太子殿下妃殿下、天皇陛下皇后陛下がテーブルに来られ、軽いフレンチ料理をいただきながら歓談させていただきました。私は場違い間のある最年少なのでおとなしくしていたのですが、恩賜賞・学士院賞受賞時のお茶会でご説明した私の研究内容を皇后陛下は「不思議なお話でしたね。」と覚えていてくださいました。ありがたいことです。もう,お目にかかることはできないのでしょうか。

今回文化勲章を受章された長尾真先生は元京大総長で、私の恩師川嵜敏祐先生の定年退職パーティに来られことをお話ししました。同じく文化勲章を受賞された劇作家の山崎正和先生は、私が読んでいる新聞に唯一基礎科学を応援する文章を書いてくださった方で、お礼を述べて、一度お目にかかりたいと願っておりましたとお伝えすることができて、とても良かったです。

 

森教授 2018年度 安藤百福賞大賞受賞

本日 (3月30日)、感動的な最終回を迎えたNHKの朝ドラ「まんぷく」主人公のモデルである安藤百福氏の名を冠する賞が存在することは知っていました。百福氏の理念である「食創為世(食を創り世のためにつくす)」に基づいて設立された「食創会」が食文化振興に貢献する方を表彰するものなので、私には関係ないと思っておりました。ところが昨秋、私がその大賞受賞者に内定したとのビックリするような連絡がありましたので、有り難いこととお受けいたしました。

昨年末にプレスリリースされましたが、授賞式は3月12日 (火) の午後にホテルニューオータニ東京で行われました。食創会の現会長は小泉純一郎元首相で、授賞式前と授賞式後の食事会の際にお話しさせてもらうことができました。やはり、オーラが出ていますね。小泉先生と食創会の安藤宏基理事長 (まんぷくでの立花源さんです) と私の3人で短い記者会見を行い (写真左)、記念写真撮影後 (写真中)、小泉先生から表彰状を直接いただきました (写真右)。

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授賞式に来賓として2人の現職大臣(農林水産省と文部科学省)が来られてスピーチされたのにまた驚きました。百福氏は故福田赳夫先生のご自宅に出入りされていて、その際に、福田先生の書生をされていた小泉先生と出会われたそうです。それにしても、一代でここまでのものを築かれた百福氏はまさに超人ですね。ハレー彗星の接近とともに生まれ (明治43年)、スペース・ラム (宇宙食ラーメン) の開発とともに逝かれた (平成19年、96歳) 百福氏の社葬は、その人生を象徴するように「宇宙葬」と名付けられて京セラドーム大阪で盛大に行われたそうです。合掌。

授賞式後に約1時間の受賞講演を行いました。DNAを説明するときには、進次郎さんが今ご活躍なのは純一郎先生のDNAを受け継がれているからですねと、軽口をたたかせてもらいながら、小胞体ストレス応答をわかりやすく解説し、この研究が健康寿命の延伸につながる有用な食品の開発にも貢献できることをお話ししましたところ、安藤理事長は「小学生でもわかるように話してくれた。これを聞けば科学への興味をもつのではないか」と仰ってくださいました。

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授賞式と食事会には女優の竹下景子さんも出席されていました (写真上、後列左から5人目)。食創会のご厚意で両親を倉敷から呼び寄せることができ、親孝行ができました。今回は、有用食品の開発という新たな視点を得ることができた受賞でした。

森教授 2023 慶應医学賞受賞

京都大学大学院理学研究科を定年退職する最終年度に、慶應医学賞を受賞することができました。第28回と比較的若い賞ですが、受賞者10人が後にノーベル賞を受賞している権威ある賞です。外国人1人、日本人1人が受賞します。https://www.ms-fund.keio.ac.jp/prize/

今回のお相手は、2013年に第1回のブレークスルー賞を受賞され、私のブレークスルー賞授賞式に来てくださった Napoleone Ferrara 博士です。血管内皮成長因子 VEGF を発見され、それに対する中和抗体を用いて様々ながん、および、成人の失明原因の大部分を占めている加齢性黄斑変性に対する治療法を確立されています。奥様の千佳様は大阪出身の日本人で、6年ぶりの再会です。

授賞式は11月9日 (木) に慶應大学の信濃町キャンパスの北里講堂 (北里柴三郎先生は慶應大学医学部の初代学部長だそうです) で開催されました。授賞式は厳かに執り行われました。

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受賞講演はたっぷりの1時間。10月末から博多での生化学会、北京でのカンファレンス (11月3・4日) と出張続きで、おまけに同時通訳がつくということで、発表原稿を事前に送らなければなりませんでした。北京往復の飛行機の中や帰りのはるかの中などを使いながら、できたところから原稿を送り、ギリギリ間に合った!という感じでした。U P Rに出会った頃から現在までの研究成果に加えて ”My optimistic future plan” というタイトルで初めて大風呂敷を広げた講演をしましたが、好評だったようです。授賞式後に記念レセプションがあり、楽しく歓談させていただきました。早めに終わりましたので、ホテルのバーで、Ferrara ご夫妻、参加してくれた吉田秀郎氏ともう少し飲みました。

翌日には、薬学部長主催慶應医学賞記念シンポジウム2023「細胞応答から読み解く生命現象」に招かれました。これまで、慶應医学賞は医学部 (信濃町キャンパス) の行事という感じで、今回も Ferrara 博士は信濃町キャンパスでの「慶應医学賞受賞記念シンポジウム2023」に招かれています。今回初めて、有田誠薬学部長が主催された記念シンポジウムが薬学部のある芝共立キャンパスで開催されました。大学院生3人と若手教員1人による口頭発表の後、私が基調講演「⼩胞体ストレス応答の分⼦機構解明における突破⼝」をし、昨日には話せなかった諸発見の裏側をお話しました。最後にお悩み相談的な「研究者として、君たちはどう生きるか」と題したRound Table Discussionが行われました。200名を超える参加者で大盛況だったとのことで、お役に立てたようです。

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