森先生について

Dr. Mori is a leading researcher in 
the field of Protein Quality Control,
   focusing on the biological and
  physiological importance of the 
Unfolded Protein Response (UPR).

mori (at) upr.biophys.kyoto-u.ac.jp


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eLifeにメダカ個体解析論文を上梓&パリ

2017年10月15日

2013年にノーベル生理学医学賞を受賞されたランディ・シェックマン氏が、もう Nature, Science, Cell には論文を出さないと宣言して、自ら創刊した eLife に石川助教のメダカ個体解析論文が掲載されました。全ての真核細胞で保存されている小胞体ストレスセンサー IRE1 が小胞体ストレスに応答して活性化されると、下流の転写因子をコードする XBP1 mRNA のスプライシングが開始されるだけでなく、アダプター分子 TRAF2 がリン酸化 IRE1 に結合することによって JNK 経路が活性化されたり、様々な mRNA を比較的非特異的に切断する Regulated IRE1-dependent decay of mRNA (RIDD) が活性化されたりします。そこで、メダカの個体で発生する生理的な小胞体ストレスに対応するにはどの経路が重要か調べ、XBP1 mRNA をスプライシングして活性型の転写因子 XBP1 を産生することで十分であるという結論を得ました。

面白いことに、アメリカで研究している韓国人の H. D. Ryoo さんが、同じ着想でショウジョウバエを調べ、XBP1 mRNA スプライシングに加えて RIDD も重要であるという結論を得て JCS に最近発表しています。ショウジョウバエには ATF6 が存在しますが機能を有していないので、IRE1 の2つの機能が重要ですが、メダカでは ATF6 が小胞体シャペロンを迅速に転写誘導する能力を獲得したため (その結果、構造異常タンパク質を修復することができる)、ただ単に mRNA を分解するだけでタンパク質を生み出さない RIDD の重要性が低下したのだろうとディスカッションしました。小胞体ストレス応答に進化の観点を加えると本当に面白くなります。


10月2日 (月) 3日 (火) にパリで開催されたシンポジウム「Endoplasmic Reticulum Functions in Physiology and Pathology」に出席してきました。ヨーロッパで小胞体を研究している人たちが2年に1回シンポジウムを開催しているそうで、今回は主催者でフランス人の Eric Chevet から keynote speaker として来てくれないかと招待されたのです。

2日午前10時からPeter Walterが1時間、彼らがスクリーニングして得た PERK の阻害剤がマウスの記憶や学習能力を向上させ、いくつもの病気モデルマウスの症状を改善させるというとても興味深い講演内容でした。彼が強調したのは、最初から病気の治療薬を探索したのではなく、基礎研究が発展して治療薬が産まれた、その際にカナダ人研究者への一本の電話が大きなターニングポイントとなった。さらに、この研究をしたカーメラは1990年代に酵母の小胞体ストレス応答の解析を行った Peter の大学院生で (HAC1 mRNA のスプライシングにおいて IRE1 が切断酵素で tRNA ligase が連結酵素であることを証明)、その後結婚して3人の子供を育て、一段落したからサイエンスに戻ろうとしたけど、10年以上も論文のない彼女を雇用してくれるところはどこにもなかったので、Peterが機会を与えた。つまりはセレンディピティー。

この日はノーベル生理学医学賞の発表日。現地の NHK のテレビカメラが入るという迷惑な状況下、11時半過ぎに概日リズム (サーカジアン) の開拓者3人に贈られることをネットで知りました。

今回、輸送小胞の巨大化を開始する Tango1 を発見した Vivek Malhotra さんに初めて会って議論できたことは大きな収穫でした。彼も我々の研究にとても興味を持ったようです。また、夕方から2時間ほど若手研究者や大学院生と入れ替わり立ち替わり議論して有意義な時間を過ごしました。

3日午前9時から私が1時間、イントロダクションは Peter が行ったので重複を避け、小胞体ストレス応答研究の歴史を生物進化の観点を加えて解説し、さらに生理的小胞体ストレスに対応する3つの経路、ATF6α/ATF6β (MBC, 2013)、BBF2H7 (JCB, 2017, 6月10日のブログ参照)、IRE1-XBP1 (eLife, 2017,上記) の話をしたら、とっても好評でした。

この日の昼食でシンポジウムは終わり、夜の便で帰路につきました。

日本を出発したのは9月29日 (金)。朝8時発の JAL 便で成田を経由して約16時間後にパリ到着 (同日夕方)。パリは実はこれが2回目で、1回目は多分 D1 の時で、学生時代しか長い休みは取れないだろうと、研究室の後輩達に誘われて格安ヨーロッパツアーに参加したのです。物価の安いギリシャやイタリアで長く過ごし、ウィーン、パリやロンドンは駆け足でした。それから30年以上がたっています。1日 (日) の夜のウェルカムディナーから行事が始まりますので、それまでを休暇としてお上りさんをしました。天気予報では土曜日が晴れ、日曜日は雨とのことでしたので、土曜日に市内を歩き回り、日曜日は美術館巡りとしました。

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土曜日、地下鉄を使ってまず凱旋門 (上左)、シャンゼリゼ大通り (上中) を通ってエッフェル塔 (上右) へ。展望台へ行こうとしたのですが、入場券を買うために長蛇の列。諦めて、遊覧船に乗ってセーヌ川クルーズを楽しみました。朝には雨が少し残っていたのですが、この頃から晴れ、オープンなデッキでしたが気持ちよく過ごせました。いくつもの橋の下をくぐり、両岸の歴史的建築物やパリらしいおしゃれな風景を楽しみました。

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午後からはパリで一番高いモンマルトルの丘 へ。絵描きさんがたくさんいて絵を売っている賑やかな観光地 (下左) の中心にサクレ・クール聖堂 (下中) がそびえ立ち、300段あるというステップを登って(狭い螺旋階段が続き、きつかった) ドームのてっぺんに行くと市内を一望できました (下右)。

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日曜日にはまずルーヴル美術館へ (下左)。開館時間に少し遅れていったら既に長蛇の列で、手荷物検査場に行くまでに50分。日曜日で観光客が多いからかなあと思っていましたが、日曜日は美術館の入場料が無料になるので混雑するのだそうです。ガラスのピラミッド (下中) を通ってまず「サモトラケのニケ」へ (下右)。ラスカー賞のトロフィーの元ですが、思っていた以上に大きかったです (1回目に来たときには意味がわからなかった)。モナ・リザとミロのヴィーナスは直ぐに見つかりましたが、お目当ての「民衆を導く自由の女神」がなかなか見つからなくてへとへとに。宗教画には余り興味がないし、やはりルーヴル美術館は広すぎる。

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午後には気を取り直して初めてのオルセー美術館へ。ここでは霧雨が降る中80分待ち。でも待った甲斐があって、5階はまさに「印象派の殿堂」。マネ、モネ、ルノワール、セザンヌなどの名作がこれでもか、これでもかと並んでいました。中でも、シャペロンの説明の時にいつも使っているルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」の本物に出会えたのは本当に良かったです。お嬢様とシャペロンの表情が実に生き生きと描かれていました。5階で疲れてはててしまい、地上階と2階を巡ることができませんでした。ここにはいつか戻ってきたいと思います。

この2日間は、フランス語のメニューがわからないので、中華や和食等で簡単に済ませましたが、日曜日の夜と月曜日の夜はディナーに招待されていたので楽しみにしていました。日曜日夜のカラマリ (イカリングフライ) とステーキ (タマネギたっぷりでとても甘いお肉でした)、月曜日夜のお魚をアップしておきます。今回ビックリしたのは、フランスの方々、みんな良く英語を話すことです。30年前には見られないことでした。テレビの影響だとか。また来たいですね。

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森研究室鍵論文

  • Forcible Destruction of Severely Misfolded Mammalian Glycoproteins by the Non-glycoprotein ERAD Pathway.
    J. Cell Biol., 2015
  • EDEM2 initiates mammalian glycoprotein ERAD by catalyzing the first mannose trimming step.
    J. Cell Biol., 2014
  • ATF6α/β-mediated adjustment of ER chaperone levels is essential for development of the notochord in medaka fish
    Mol. Biol. Cell, 2013
  • Induction of Liver Steatosis and Lipid Droplet Formation in ATF6α-knockout Mice Burdened with Pharmacological Endoplasmic Reticulum Stress
    Mol. Biol. Cell, 2010
  • ATF6 is a transcription factor specializing in the regulation of quality control proteins in the endoplasmic reticulum
    Cell Struc. Func., 2008
  • Transcriptional induction of mammalian ER quality control proteins is mediated by single or combined action of ATF6α and XBP1
    Dev. Cell, 2007
  • A time-dependent phase shift in the mammalian unfolded protein response
    Dev. Cell, 2003
  • XBP1 mRNA is induced by ATF6 and spliced by IRE1 in response to ER stress to produce a highly active transcription factor
    Cell, 2001
  • Mammalian transcription factor ATF6 is synthesized as a transmembrane protein and activated by proteolysis in response to endoplasmic reticulum stress
    Mol. Biol. Cell, 1999
  • Identification of the cis-acting endoplasmic reticulum stress response element responsible for transcriptional induction of mammalian glucose-regulated proteins; involvement of basic leucine zipper transcription factors
    J. Biol. Chem., 1998
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