研究内容

小胞体ストレスと種々の疾患

小胞体ストレスは多くの疾患と関連していることがわかってきており、シャペロン研究がもたらす成果は単に学問的興味にとどまらず、 人類の健康にも福音をもたらすものと期待されています。

脳虚血疾患では、小胞体シャペロンの発現量を増大させストレスによる小胞体内のダメージを軽減させることによって治療が可能となるかもしれません。また、癌細胞は個体内では塊となって増殖することが多く、その内部はかなりのストレス状況となっていて、小胞体ストレス応答を悪用して増殖を続けている可能性もあります。したがって小胞体シャペロンの発現量を低下させることで癌細胞の増殖を抑制することが可能となるかもしれません。

さらに、糖尿病、パーキンソン病などの神経変性疾患、心臓疾患、アテローム性動脈硬化等の発症・進展に小胞体ストレスが深く関与していることが報告されています。

今後、小胞体シャペロンの作用機序が明らかになり、小胞体内のフォールディング異常に対する細胞応答機構の全容が解明されれば、種々の疾患の治療に有効な、まったく新しいタイプの方法論が確立されていくのではないかと期待されています。

小胞体ストレスの概念 タンパク質の一生