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大隅良典先生、ノーベル賞のご受賞誠におめでとうございます。

2016年10月03日

尊敬する大隅良典先生が,今年度のノーベル生理学・医学賞の単独受賞者に選ばれました。本当におめでとうございます。酵母を使って始まった基礎研究に大きな光が当たって嬉しいです。

拙著「細胞の中の分子生物学」のオートファジーの項目を転載します。

■オートファジー

 ユビキチン・プロテアソーム研究の大流行とともにリソソーム研究は下火になったのですが、
1990年代からオートファジーの再浮上によって逆襲が始まりました。

 オートファジーをみつけたのはデデューブです。デデューブは電子顕微鏡を用いて細胞内を観察し、飢餓状態においた細胞では、ミトコンドリアやペルオキシソームなどの細胞内小器官が膜で囲まれていることを発見しました。この観察から、細胞は自分で自分の一部を食べて飢えを凌いでいるのではないかと考え、この現象を1963年にオートファジー(自食)と名付けました。オートファジーとは、ギリシャ語のself eatingに由来します。

 しかし、電子顕微鏡では固定した死細胞を観察しますので、オートファジーの仕組みには迫っていけませんでした。こうして、研究対象として長らく忘れられることとなったオートファジーですが、それを見事によみがえらせたのが大隅良典でした。顕微鏡観察が好きな酵母の研究者である大隅は、酵母を栄養飢餓条件下で培養すると、まさにオートファジーが起こることを見いだしたのです。1993年に、大隅が酵母遺伝学の手法(第6章で詳しく解説します)を活用してオートファジーに関与する16個の遺伝子を発見し、それを契機に、その仕組みが次第に明らかになっていきました(まだまだ未解明な部分が多いですが)。

 簡単に説明すると、小胞体とミトコンドリアが接触しているところから隔離膜と呼ばれる膜が伸びてきて(吉森保の最新の成果)、ミトコンドリアなどをまわりの細胞質もろとも取り囲みます。こうしてできた小胞をオートファゴソームと呼びますが、これがリソソームと融合すると、リソソーム内のたくさんの加水分解酵素がオートファゴソームの内容物を次々と壊していくのです(図4-9)。こうしてめでたくリソソームは復権を果たし、オートファジー研究は多くの研究者を魅了しました。今では、オートファジーは一大研究分野として発展しています。

 プロテアソームはドーナッツの穴の中で分解するので、ひも状になったタンパク質しか分解できません。これに対して、リソソーム内には多種類の加水分解酵素が含まれているので、細胞内小器官のような油性の膜で囲まれたものでも分解するのに問題がありません。タンパク質の構造がこんがらがって凝集してしまうと、ひも状にほぐすことは困難ですから、プロテアソームはお手上げです。オートファジーなら凝集体を隔離膜で取り込むことができるので、リソソームと融合してこれを分解することができます。

ツーショット写真をとっててよかった!(2015年4月14日のブログ)


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